保健婦活動—こころに残るこの1例
母の死にこだわりを持ち続けて
由良 里和
1
1茅ケ崎市健康課
pp.647
発行日 1990年9月15日
Published Date 1990/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900182
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その方はとても緊張した面持ちで健康相談会場に入ってにられた.70代かなと思える容貌だが,薄化粧し,身仕度もこぎれいにすっきりとし,小柄ながらきりりとしているところがあり,職業婦人的雰囲気をもっていた.待つ間も恐縮した様子で,背を曲げ小さくなって座っていた.その方の順番が来て,私の前に座られたが,なかなか話しが始まらない.どう話したらよいか考えている様子であった、しばらくの間をおいて,「今日はどうされましたか?」の問いかけに,「昨年から血圧が高くて……」と口ごもる感じで話し始めた.健康相談という場に来たことも受けたこともないのか,とても緊張している.血圧測定をしながらのアナムネーゼ聴取にも,始終手のハンカチをにぎったり,もちかえたり,目も伏し目がち,声も小さくとぎれとぎれ,時には涙ぐみ,涙声になりながら,といった様子であった.こちらの受けた印象はとても理知的な感じであり,思いを頭の中で整理しながら,一言一言確認しながら話しているのがわかった.それによると,「自分は69歳であり未婚である.第11〜13胸椎圧迫骨折をしたため仰臥できない.弟夫婦の近くに実母と住んでいた,退職までカウンセリング関係の仕事をしていた.退職後,実母がガンに冒され,亡くなるまで看病してきた.
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