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外来において,がん患者や家族に対する面談を担っている看護師の皆さんは,外来の限られた時間の中で,患者・家族の心情や状況をとらえニーズに合わせて支援しようと,日々努めている.看護師が診断結果を告知する外来の診療場面にかかわり,その後に時間をとって患者・家族の話をじっくり聴くことで,患者・家族は気持ちを整理することができたり,検査や治療について理解し自分の生活にどのように影響してくるのかわかり,見通しを立てることができたりする.面談する前に比べ,明るい表情になって帰宅する患者の様子を見て,看護師は安堵する,一方,落胆した患者らの姿を見ると,帰宅後のことを心配したり,面談で話題になったことについて誤解していないか,正しく理解できただろうか,自分は患者や家族の気持ちに寄り添えただろうか,コミュニケーションは上手くできただろうか,自分の面談技術は大丈夫だろうかなどと,日々疑問や迷いも抱いたりしている.患者や家族に面談する看護師がいかに支援できるか,実に至難の業である.
そこで,本連載は,面談を担う看護師の皆さんが,①看護面談に必要な手順を知る,②患者(家族)の気持ちを引き出して整理することができる,③患者(家族)の気がかりに対し的確な情報提供ができる,④ポイントをふまえた面談ができたか,振り返りの方法を知り自己評価できる,⑤自身のコミュニケーションスキルを評価し課題をもってトレーニングを積むことができる,この5点をねらいとしたい.
基盤となる面談の進め方,面談を振り返り次に生かす手立て,効果的なコミュニケーションスキルの方略があれば,その経験を蓄積し面談技術を高めていくことができる.しかし,がん患者一人ひとりは,がん種も治療法も異なれば,家族構成や社会的背景,価値観も違い,具体的に取り上げられる話題は個別性が高い.したがって,その具体的な事象にできるだけ精通し知見を常々更新していくことは必要である.とは言え,すべてに精通するには限界があるので,自分の得意とする領域を自覚し,苦手な領域については同僚や他職種に依頼し助けを求めることも大切である.具体的事象の知見と面談技術の両輪をもって,がん患者・家族への面談の効果は高まる.
本連載では,その面談技術について言及する.本連載の読者が,診断時から緩和ケアを提供できるように面談を進行し,適切なコミュニケーションスキルを用いて,患者と家族の関心事を引き出しながら感情の整理と情報提供を進めることができるように,筆者らが事例を蓄積して有効な外来がん看護面談を継続するための基盤となる手段を提示する.面談を初めて担当する看護師,また,すでに担当しているが日々疑問を感じている看護師,面談の回数を重ねたベテランであるが自分の後任を育て引き継いでいく使命をもっている看護師の皆さん,面談事例から手ごたえをもらい,よりよい支援につなげられるように共に研鑽を深めよう.
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