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Ⅰ 緒言
2005年、わが国においてがんによる死亡は32.5万人(全死亡例の30.1%)にのぼり、死因の1位を占めている5)。根治不能ながん患者の療養のために、1981年聖隷三方原病院にてわが国で初めて緩和ケア病棟(Palliative Care Unit:以下PCUと略)が開設された以後、1990年に入り急速にその数は増加し、2006年163箇所となった。ほとんどのPCUは、独自の患者の入院適応基準を定めているものの、PCUがどのような病態的、心理的、社会的状況にある患者に特に重要であるかはまだ不明な部分が多い。PCUへの入院の適応基準としては、日本ホスピス緩和ケア協会が「1)悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群(AIDS)などに罹患し、医師が治癒困難と判断した患者、または自ら積極的治療を希望しない患者、2)患者と家族、またはそのいずれかがホスピス緩和ケアを望んでいること、3)ホスピス緩和ケアの提供時に患者が病名・病状について理解していることが望ましく、もし理解していない場合、患者の求めに応じて適切に病名・病状の説明をする、4)家族がいないこと、収入が乏しいこと、特定の宗教を信仰していることなど、社会的、経済的、宗教的な理由で差別はしない」と定めている。しかし、実際PCUではこの判定基準だけでは運用に足らず、それぞれの施設にて個々の事例につき判定会議で判断がなされているが、ある程度施設に応じた判断基準を持つ場合も多い反面、他の施設の事情を知らず、入退院をコントロールする職員としても判断に苦慮する場合が多い。一方、PCUを希望する患者や家族、またPCUを勧める外部の医療機関にとっては入院基準を知るのに困難が感じられる場合が少なくない。これまでのところ、PCUの入院判定の実情を反映している報告は1999─2000年、米国にてLorenzら1)によって調査された報告があり、これによると63%のPCUは少なくとも一つ以上の基準で入院を制限していた。特に化学療法を受けている患者は48%が入院適応外と判断され、このほかTPN(38%)、放射線療法(36%)、増悪時の一般病院入院希望(29%)、介護者の不在(26%)、輸血(25%)、経管栄養(3%)でホスピスへの入院が制限されていた。わが国では、詳細な入院判定を明記した資料はほとんど公開されていない。そこで、本調査は、本県のPCUの入院判定の実情を明らかにすることによって、PCUにおける入院判定の判断に向けた基礎資料にすることを目的とする。
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