今月の症例
予後数日の患者を自宅へ ~患者・家族の思いをつなぎ短期間で在宅調整できた症例~
荒川 翼
1
Tsubasa ARAKAWA
1
1茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター/がん看護専門看護師
pp.73-76
発行日 2020年1月1日
Published Date 2020/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_73
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はじめに
がん患者にとって,望んだ場所で療養生活を送ることは重要な希望の1つであり,遺族調査では自宅での看取りを希望しているがん患者は30%前後であるとされている1).しかし,2017年のがんによる死亡者数37万人のうち,自宅で亡くなったがん患者は11.7%であり2),自宅での看取りを望んでいても,病院で亡くなるがん患者が少なくないことがわかる.
がん患者の自宅での看取りが難しい要因は,多岐にわたる.終末期のがん患者は,病状が進行しがん性疼痛,呼吸困難,倦怠感,終末期せん妄など,さまざまな身体症状が出現してくる.それらの身体症状を自宅でコントロールすることの難しさや,苦痛を伴う患者を,自宅で共に過ごす家族も見守らなければならないことなどが,自宅での看取りを困難にしている要因の1つである.また,身体症状に伴いADLが低下し,家族の介護負担が大きくなることや,患者と家族の意向が一致しないなどさまざまな要因が考えられる.
今回の症例に,筆者は病棟看護師の一員としてかかわった.今回の症例では,患者の予後が日単位と考えられてからの自宅退院の希望だったことや,終末期せん妄,がん性疼痛などの身体症状のコントロール,退院後すぐに亡くなる可能性がある状況で訪問診療を引き受けてくれる診療所があるかどうかなどの課題があった.しかし,患者,家族の希望を叶えるために,医療者が一丸となって調整を行い,短期間で退院することができた.
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