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どんな薬?
白金製剤で最初に誕生したシスプラチンは,非常に高い抗腫瘍活性を有していて,固形がんだけでなく造血器腫瘍など多くのがん種で効果を示しています.しかし,強度の悪心・嘔吐や腎毒性などの副作用症状もあり,腎機能障害のある人には使えないことやシスプラチンの投与前からハイドレーションを行うなどの支持療法が必要という問題があります.そこで,シスプラチンの抗腫瘍効果を維持しながら,催吐性や腎毒性,末梢神経障害などの毒性を軽減する目的で,第2世代の白金製剤としてカルボプラチンが開発されました.カルボプラチンは日本で1990年に承認されており,このほかにネダプラチン,オキサリプラチンなども開発されています.
カルボプラチンは,腎毒性が低いため水分負荷が不要で,シスプラチンよりも悪心・嘔吐や腎機能障害の発現率が低いという利点がある一方で,血小板減少や過敏症などの有害事象があります.そして,一般的に抗がん薬の投与量は体表面積で算出しますが,カルボプラチンはAUC(薬物濃度時間曲線下面積)が抗腫瘍効果や血小板減少などの有害事象と相関するために,目標AUCとGFR(糸球体濾過量)を使って計算するカルバートの式を使用して算出します.筆者は5年程前に,ASCO(米国臨床腫瘍学会)に参加したときに,たまたまカルバート医師を見かけました.この人がカルボプラチンの投与量計算式を作った人なのかと非常に強い印象が残り,その後はこの計算式が忘れられないものになりました.最近では,カルボプラチンの添付文書に体表面積あたりの投与量が記載されていますが,現在でも76.8%の施設では目標AUC値を用いてカルバートの式で算出しているという調査結果が出ています.覚えておくと,実際に投与量を自分で計算してみることもでき,リスクマネジメントとして活用できるかもしれません.
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