特集 生活の視点で読み解く! 今日の緩和ケア ~患者になにが起こっているのか~
Ⅱ 排泄する
患者さんの排泄に支障があるときにはなにが起こっているのか ~その原因と症状マネジメント~
清水 正樹
1
1国立がん研究センター中央病院 緩和医療科
pp.415-420
発行日 2020年6月15日
Published Date 2020/6/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_415
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病態 ~なにが起こっているのか~
排便に関する障害
経口摂取された食物は小腸までで栄養の大部分が吸収される.繊維などの不消化物が大腸に送られ,蠕動運動にて肛門側に輸送される過程で水分が吸収され固形化する.
食事中の水分約2 L/日と,唾液・胃液・膵液・胆汁・小腸液など消化液の水分約7 L/日が消化管内へ流入する.小腸粘膜で7.4 L/日が吸収され,1.6 L/日が大腸へ流入する.大腸でこのうち1.5 L/日が吸収され,便中に排泄される水分量は100 mL/日程度となる.大腸には1日約6回程度大蠕動が起こる.また,経口摂取による胃・結腸反射でも蠕動が誘発される.S状結腸から直腸に便が移動すると直腸壁が伸展される.その刺激は仙骨神経を通じて大脳皮質に到達し便意を生じる.骨盤神経を介して排便反射が生じて内肛門括約筋や恥骨直腸筋が弛緩する.また,直腸内圧上昇は延髄・視床下部を介して上位中枢に到達し,随意的な外肛門括約筋の弛緩や怒責が行われ,排泄に至る.
これらの過程のいずれかの障害によって,便秘あるいは下痢が生じる.
便秘,下痢の発症機序の詳細は後出の「症状マネジメント」の項に記す.
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