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看護師のアセスメント
吃逆は,ほとんどの場合は数秒~数日以内に消失する一過性のものであり,問題とならないことが多い.一方で,持続する吃逆は,患者に苦痛をもたらすことが報告されており,48時間以上持続するものを持続性吃逆,1ヵ月以上持続するものを難治性吃逆と分類されている1).これらの出現頻度は,外来受診した患者110,000人のうちわずか55人であり,非常にまれな症状である.一方で,終末期がん患者の約4%2),がん薬物療法を受けているがん患者の0.39%(範囲 0.08~6.03%)3)で生じることが報告されており,前者と比較し,がん患者は吃逆の出現頻度が高いといえる.また,吃逆は,女性よりも男性で生じる割合が高いことが報告されている3,4).
持続する吃逆は,正常な呼吸を妨げるだけではなく,会話や集中力,食事などを含む日常生活に悪影響を及ぼし,フラストレーション,倦怠感,不眠,体重減少に加え,疼痛などの症状を悪化させる可能性がある4,5).とくに,残された時間を大切に過ごすことが望まれる終末期の患者においては,持続する吃逆は,数日だけでも苦痛かもしれないことは安易に想像できる.
そのため看護師は,出現している吃逆の体験を適切にアセスメントし支援につなげることが重要であると考える.患者が体験している吃逆による影響は,個々によって異なる.そのため,患者の声に耳を傾け,その体験を理解することが重要である.具体的には,吃逆の持続時間や頻度とともに,吃逆に随伴する苦痛症状および日常生活への影響について確認することなどである.たとえば,筆者が緩和ケア病棟で出会った患者は,5日以上続いている吃逆に苦しめられていた.また,持続する吃逆により不眠であること,家族との会話を妨げられているという困りごとを抱えていた.加えて,近い将来に娘の結婚式があるが,吃逆が続いている状態では周囲に迷惑をかけてしまい参列はむずかしいのではないかという不安を抱えていた.また,別の患者は,持続する吃逆により,倦怠感と食欲不振の症状を抱え,「もう大好きな食事ができない」と話し,家族もまた「食べることが大好きな人だったので,つらそうで見ていられない」と話し,最期まで食べ続けたいという希望を妨げていた.このように,患者が体験している吃逆に伴う影響は,現在の苦痛だけではなく将来への計画をも妨げてしまう場合がある.繰り返しにはなるが,吃逆に伴う体験は個々により異なるため,患者の体験に耳を傾けることはたいへん重要である.
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