疾患と検査値の推移
劇症1型糖尿病
芳川 篤志
1
,
今川 彰久
1
1大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学
pp.279-285
発行日 2012年4月1日
Published Date 2012/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103497
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疾患・病態の概説
1.概 念
現在糖尿病は,1型糖尿病と2型糖尿病,その他特定の機序・疾患によるもの,妊娠糖尿病の四つに分類されている.わが国において大多数を占めるのは生活習慣を背景として発症する2型糖尿病であり,インスリンの分泌低下とインスリン作用不全がその成因である.1型糖尿病はこれとは異なり,インスリンを分泌する膵β細胞の破壊により生じ,通常は絶対的インスリン欠乏に至る糖尿病と定義されている.したがって,インスリン注射による治療はほぼ必須である.1型糖尿病の多くは自己免疫により膵β細胞が破壊されると考えられており,患者血中に存在する自己抗体はそのマーカーと考えられてきた.
劇症1型糖尿病は2000年に報告された1型糖尿病に属する新しい臨床病型である1~3).すなわち,膵β細胞が破壊されて発症する糖尿病であるが,発症は他の1型糖尿病と比べても非常に急速であり,一般の1型糖尿病では発症時には約20%の膵β細胞が残存しているのに対し,劇症1型糖尿病では発症時にほぼ完全に破壊されている.従来,1型糖尿病の診断マーカーと考えられてきた自己抗体が陰性で,ケトアシドーシスを伴って発症し,発症時に著明な高血糖を認めるにもかかわらず,過去1~2か月の平均血糖を示すHbA1c値は正常または軽度上昇にとどまり,発症時に既に内因性インスリン分泌の指標(血中/尿中Cペプチド)は著しく低下しているといった特徴を有する疾患である.また,発症時に血中膵外分泌酵素の上昇を認めることも特徴の一つである.
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