内科疾患と皮膚・2
脱毛
西山 茂夫
1
1東大皮膚科
pp.416-419
発行日 1968年3月10日
Published Date 1968/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202155
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脱毛の病態生理
脱毛と内臓病変との関係を論ずるにあたつて,まず毛の種類(hair pattern)と毛の周期(haircycle)を理解する必要がある。毛の種類には,うぶ毛(Lanugo),硬いうぶ毛(Vellus)および終毛(terminal hair)がある。硬いうぶ毛というのは,生後6カ月ごろに頭部に生じ,思春期まではこのタイプの毛が大部分である。20歳ごろになると体の多くの部分で,硬い濃い毛,すなわち終毛が多くなる。特に成人男子では毛の90%が終毛であるが,女性では硬いうぶ毛が終生変わらずに残つている部分が多い。このように1つの毛嚢は,生涯を通じて,うぶ毛,硬いうぶ毛からしだいに終毛を形成する能力がある(ただし胎生期以後には毛嚢は新生されない)。しかしある病的状態では毛嚢はこれと逆の方向に毛をつくることがある。またある場合には,同じ毛嚢が形成不全性(dysplastic)の毛をつくるようになる。
この毛の種類とは関係なく,すべての毛は同じ毛嚢から周期的にはえ代わる。毛の周期というのは,1つの毛嚢のなかで古い毛の上で,新しい毛のつくられる時間的過程のことである。動物のなかには連続的に毛がつくられ,周期のまつたくないものもあるが(羊),またマウス,ラッテ,家兎のごとく,同じリズムで,全身の毛の形成が行なわれるものもある。人間では,個々の毛嚢が独自の発育時期をもつていて,これを3段階に分けることができる。
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