今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション
ここが聞きたい105例の対処と処方
II 内分泌
【脱毛】53.髪の脱毛を訴えている患者です.
高橋 一広
1
,
高田 恵子
1
,
倉智 博久
1
1山形大学医学部産科婦人科学
pp.520-521
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101486
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1 診療の概説
髪の毛には,毛が伸びる時期の成長期,抜ける準備時期の移行期,抜け落ちる休止期を繰り返す毛周期がある.女性の頭髪の成長期は3~7年,移行期は2~3週間,休止期は3か月続く.人間の頭髪は約10万本あり,うち85%が成長期,5%が移行期,10%が休止期と考えられている.休止期の毛髪は軽微な機械的刺激により容易に抜け,1日に50~100本の脱毛は正常範囲内であり,生理的脱毛という.脱毛は,毛周期に即した生理的脱毛と毛周期を逸脱した病的脱毛に分類される(表1)1).脱毛を訴える場合は,その原因が何であるか慎重に鑑別することが必要となる.
毛髪の成長には男性ホルモンや女性ホルモンが関与している.テストステロンから5α─リダクターゼにより転換された生理活性の強いジヒドロテストステロン(DHT)は,ひげ,陰毛,四肢毛の発育を促進するが,頭髪に関しては抑制的に作用する.エストロゲン受容体(ERαおよびERβ)は毛乳頭に発現しており,マウスではエストロゲンが毛髪成長を遅らせることが知られている 2).一方,ヒトでは妊娠中に増加するエストロゲンが頭髪の成長期を延長するとも考えられている 3).
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