医学と看護
痛み
清原 迪夫
1
1東京大学医学部麻酔科
pp.38-41
発行日 1968年4月1日
Published Date 1968/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913939
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痛みということ
痛みという感覚は,ほとんどすべての人が知っていますが,それを定義づけることは,大変むずかしい問題です。
それは,病気や怪我をしているその人だけが体験している感覚の内容を意味していて,第三者は,その言動で類推する以外に知るすべがないからです。たとえば,膝に擦過傷をうけた入がいるとします。受傷時には,その人は痛みを訴えたが,その後,局所に治療が施されるともはや痛みを訴えなくなります。患者以外の人がその傷口をみて,痛そうであると思っても,本人が痛いといわなければ,「痛みがあるとはいえない」わけです。この立場と反対に,医師が原因と思われるものを執拗に検索しても,器質的に痛みの原因がつかめないようなときにも,患者が痛い痛いと訴えるならば,このときには「痛みがある」ということになります。
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