特集 外科手術器具の理論と使用法
Ⅷ.その他の手術器具・材料
癒着防止フィルムの効果と適切な使用法
藤井 正一
1
1国際医療福祉大学市川病院消化器外科
キーワード:
癒着性腸閉塞
,
癒着防止フィルム
,
腹部手術
Keyword:
癒着性腸閉塞
,
癒着防止フィルム
,
腹部手術
pp.1297-1302
発行日 2017年11月25日
Published Date 2017/11/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_geka79_1297
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腹部手術後の腹腔内癒着の頻度は90%以上とされ1),腸閉塞や妊孕率低下の原因となる.単純性腸閉塞の66.1%,絞扼性腸閉塞の75.4%は癒着によるとの報告2),卵管癒着は後天性不妊症の主な原因で20~40%に癒着がみられたとの報告がある3).また,近年は腹腔鏡下手術により術後腸閉塞は減少したとのレビュー4~6)は多くみられるが,本邦で行われた進行大腸癌に対する開腹手術vs腹腔鏡下手術の多施設無作為試験であるJCOG0404の短期成績の解析では,癒着性腸閉塞の発生は全gradeおよびgrade3以上でも両群に差はみられなかった7).したがって,腹腔鏡下手術に対しても術後の癒着防止対策は重要と考える.
癒着防止材として合成吸収性フィルムであるセプラフィルムは,腹膜の欠損部や損傷部への腹腔内臓器の癒着を防止する目的で開発された.2000年代初頭は炎症性疾患や癒着手術,婦人科手術に適応が限定されていたが,現在では特定保険医療材料としてすべての腹部手術で使用が認められている.最近ではNHS化CMデキストリンとトレハロース水和物を混合させたスプレー式製材や,以前は婦人科手術のみの保険適用であった酸化セルロース膜の布状製材も一般外科手術での使用が認められるようになり,癒着防止材の選択肢は一気に広がった感がある.しかし,現時点では国内外で多くの使用実績およびエビデンスがあるのはセプラフィルムのみである.したがって,本稿ではセプラフィルムの特徴,開腹・腹腔鏡下手術での使用法,国内外での使用成績を述べる.
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