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は じ め に
以前は,脊椎・脊髄手術の手術中に生ずる脊髄障害が麻酔覚醒後でなくては診断ができなかったため,手術後には障害が不可逆的な段階に進行することが多かった.この障害を予防する唯一の手段として,誘発電位を用いた術中脊髄機能モニタリング(intraoperative neuromonitoring:IONM)が開発された.その結果,脊髄伝導障害の発生を知るばかりではなく,わずかな障害でも,その発生時刻および発生部位を確かめることができ,術式の欠陥を知り改善をすることも可能となった.
その中で,体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potentials:SEPs)が誘発電位としてIONMにはじめて用いられ1),その後,末梢神経刺激による脊髄誘発電位(spinal evoked potentials:SpEPs)が利用された2).しかし,これらの電位は全身麻酔下で電気的雑音が多い手術室での記録は困難であった.それにかわる脊髄刺激によるSpEPsは,高振幅で安定した電位が記録できるためIONMとしてより実用的になった3,4).しかし,これらの方法を用いたIONMにおいて術後脊髄運動麻痺を合併した,いわゆるfalse negativeの症例が報告されるようになり5),脊髄運動機能を客観的に評価する方法が注目され始めた.
そこで,頭皮上あるいは直接大脳運動領野を刺激することにより脊髄を下行する活動電位を脊髄の硬膜外腔より記録する運動性脊髄誘発電位(Tc-SpEPs)6),筋より誘発筋電図として記録する方法(Tc-MEPs)7)と,脊髄を刺激し下肢筋から誘発筋電図(Sp-MEPs)8)を記録する方法が臨床応用されるようになった.現在,Tc-MEPsが容易に安定して記録できるためIONMには国内外で多く用いられている.本稿では,Tc-MEPsおよびSp-MEPsによるIONMについて基礎および臨床面より両者を比較し,その利点・欠点を明らかにする.

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