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は じ め に
多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)療法は,血液を遠心分離して得られる高濃度の血小板を含む血漿を患部に投与する治療法である.血小板や白血球から放出される成長因子や,エクソソーム,マクロファージなど多種多様な生理活性物質により組織修復や抗炎症作用が期待されている.
PRP療法は,2014年に再生医療等安全性確保法が施行されて以来,さまざまな運動器疾患に対する治療法として認知されてきている.その中でも変形性膝関節症(膝OA)は,もっとも症例数の多い疾患となっている.当科でも2020年12月よりPRP外来を開始し,年間約400件のPRP投与を行っているが,約65%が膝OAの患者である.従来の保存療法では痛みがとれないが手術はまだ受けたくないといった患者層を中心に,その治療効果が期待されている.
膝OAに対するPRP療法は,ヒアルロン酸,生理食塩水,ステロイドと比較し有効であったとするメタアナリシス1)など一定の効果が報告されているが,作用機序は完全には解明されていない.また,生理食塩水のプラセボ注射と比較して効果がかわらないとする2)否定的な報告も散見される.しかし,2022年パリで行われたThe European Society of Sports Traumatology, Knee Surgery and Arthroscopy(ESSKA)で,PRP療法は軽度~中等度の膝OAに対して有効である(grade A),ステロイド注射に比べてより安全で,長期的な治療効果が期待できる(grade A)と報告され,運動器に関する主要な国際学会ではじめてPRP療法の有効性についてコンセンサスが得られた.
膝OAに対するPRP療法は関節内投与が一般的であるが,関節外への投与を併用することで治療効果が高まることがある.われわれは膝内側部痛,特に内側側副靱帯滑液包(medial collateral ligament bursa:MCL包)に圧痛のある患者に対し,超音波ガイド下に同部へPRP療法を施行し,治療効果を高める工夫をしている.本稿では,その手技や治療成績について報告する.
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