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は じ め に
骨粗鬆症や変形性関節症などの筋骨格系疾患は,高齢者の運動能力を低下させる1).変形性膝関節症(膝OA)はもっとも一般的な筋骨格系疾患で,世界人口の約4%が罹患しており2),本邦には40歳以上のX線像上の膝OA患者が2,500万人以上いると推定されている3).1年以内の膝関節痛の悪化は,長期間の追跡調査における歩行能力の低下の因子となる1).膝OAのケアと予防はロコモティブシンドロームの予防につながる4).
最新の変形性関節症研究会国際ガイドラインでは,膝OAの治療法として局所非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を強く推奨しており,経口NSAIDsは条件付きで推奨されている4).既存の鎮痛薬やテープ製剤に加えて,S-flurbiprofen plaster(SFPP)のような新しい治療法も登場している.SFPPは,保存療法の新たな選択肢として本邦でも普及している.SFPP(LOQOAテープ,大正製薬社)は,ラセミ体フルルビプロフェン(FP)の活性体であるS-FP 40mgを含有する新しいNSAIDs外用貼付剤であり,1日1回(40mg)または2回(80mg)貼付するテープタイプの貼付剤である5).SFPP 80mg/日(2パッチ/日)を7日間貼付した場合のS-FPの全身曝露量は,経口FP製剤と同程度と推定されたことから,SFPPは経口NSAIDsと同様に,胃潰瘍,血液,肝機能,腎機能,心機能に重篤な異常のある患者には投与が禁止され,経口NSAIDsとの併用は避けるべきとされている.以前の研究では,SFPP投与2週間後から臨床症状が有意に改善し,その後52週まで継続的に症状が改善したと報告されている6).さらに,SFPPによる疼痛緩和は従来の貼付剤より優れているとの報告もある7).SFPPの鎮痛効果と有用性についてはいくつかの報告があるが,いずれの研究もKellgren-Lawrence(K-L)分類grade ⅡおよびⅢ(軽症~中等症の膝OA)の患者を対象としており,K-L分類grade Ⅳ(末期膝OA)を含めた調査はなされていない8).
渉猟しえた範囲では,K-L分類grade Ⅳの末期膝OA患者におけるSFPPの有効性とアドヒアランスを記述した研究はなかった.したがって本研究では,軽症~中等症および末期膝OA患者における疼痛管理に対するSFPPの有効性とアドヒアランス率を比較し,各群におけるSFPPの使用中止と関連しうる因子を評価することを目的とした.
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