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は じ め に
化膿性脊椎炎の年間発生率は10万人あたり0.5~2.2人であり1),一般的に高齢者や慢性疾患併存患者に多く発生する.近年では糖尿病,血液透析,ステロイドやその他免疫抑制剤の使用,抗悪性腫瘍薬治療中などによる易感染性宿主が増えており,これに伴う化膿性脊椎炎の発生が増加している2).
化膿性脊椎炎の治療の基本は抗菌薬と安静・外固定による保存的治療である.しかし,初期の臨床症状は非特異的であるため診断が遅れ,整形外科へ紹介されたときにはすでに病状が進行している症例も多い.硬膜外膿瘍による神経障害が発生した症例や,脊柱の不安定性や後弯変形を生じた進行例には手術的治療が適応される.治療に難渋する症例も多く,抗菌薬が進歩した現在においても依然として生命を脅かす疾患であり,死亡率も高い.Rutgesらのシステマティックレビューでは化膿性脊椎炎の死亡率を2~20%と報告している3).
手術的治療を要する患者の割合は文献によりばらつきがある.2017年にKugimiyaらは化膿性脊椎炎83例を調査し,手術的治療を要したのは14例(16.9%)であったと報告した4).2018年のPolaらの207例の調査では,手術的治療を必要としたのは47例(22.7%)であり,80.5%が後方法,19.5%は前後合併法であったと報告している5).さらに,2021年のBlecherらの35例の調査では10例(28.6%)が手術的治療を要し,後方法が9例,前方法が1例であったとしている6).
本稿では化膿性脊椎炎に対する各種手術的治療の概説と,治療選択におけるアルゴリズムの1例を紹介し,今後の手術的治療の課題について述べる.
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