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は じ め に
骨・軟部悪性腫瘍の広範切除時,または良性軟部腫瘍切除でも部位によっては,皮膚欠損が生じる場合に再建術が必要になる.
皮膚欠損の再建方法として分層植皮,全層植皮,有茎皮弁,遊離皮弁があるが,創部の状態,腫瘍の状態に応じて適宜,適切な方法を選択する必要がある.手術の侵襲は分層植皮がもっとも小さく,植皮よりも皮弁のほうが侵襲は大きい.有茎皮弁と比べて遊離皮弁のほうがリスクは高くなる1).皮弁を選択することが術後の合併症のリスクを上昇させることはないとする報告2)はあるものの,皮弁を採取可能な部位は限られている.再発の可能性がある肉腫の治療の際は,再発時の手術の選択肢を増やすため,可能な限り侵襲の少ない手術を選びたい.
骨・軟部肉腫の術後皮膚欠損を被覆するのに,植皮を用いるべきでないとされることが多い3).特に術後の化学療法や放射線療法が予定されている場合は,一期的に遊離皮弁,有茎皮弁を選択すべきである.術後化学療法の開始の遅れは,予後に影響を与える可能性が高いが,創部が確実に閉鎖されていないと,抗悪性腫瘍薬の投与により皮膚障害や欠損,瘻孔形成をきたし,化学療法の継続が困難になる.侵襲が大きくても短時間で確実に皮膚の癒合が期待できる皮弁を選択するべきである4,5).このとき広範切除術で断端が陽性にならないよう,余裕をもったマージン設定が必要になる.
皮膚欠損部に直視下で骨やインプラントが露出している場合,感染を伴っている場合も皮弁が適応になる.骨やインプラントが露出している場合は,植皮では創部が安定せず,治癒を遷延させるばかりではなく,感染のリスクを高くし,生命や日常生活動作(ADL)まで悪影響を及ぼしかねない.
逆に年齢や腫瘍の種類から化学療法が適応外である場合,植皮術の適応を拡大できる可能性がある.近年では皮膚欠損創の治療に持続陰圧療法[negative-pressure wound therapy(NPWT)]を組み合わせることで,治療期間の短縮や合併症のリスクの低下が期待されている.当施設では2011年から肉腫切除後の皮膚欠損創に対して必要に応じてNPWTを併用してきた.本稿では当院での症例を中心に,肉腫切除後の皮膚欠損に対してNPWTを併用した創部処置の治療効果について述べる.
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