Japanese
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骨・軟部腫瘍のマネジメント(その1) Ⅲ.治療総論
4.がんロコモ
がんの運動器診療
-――がんロコモとその対策
Management for locomotive syndrome in cancer patients
髙木 辰哉
1
T. Takagi
1
1順天堂大学整形外科・リハビリテーション科・緩和ケアセンター
1Dept. of Orthop. Surg./Rehabilitation Medicine/Palliative Care Center, Juntendo University School of Medicine, Tokyo
キーワード:
locomotive syndrome
,
cancer treatment
,
skeletal metastasis
,
bone management
,
cancer board
Keyword:
locomotive syndrome
,
cancer treatment
,
skeletal metastasis
,
bone management
,
cancer board
pp.168-172
発行日 2021年4月20日
Published Date 2021/4/20
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei79_168
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は じ め に
わが国では,がんの新規罹患者が2020年の推計で年間100万名を超え,がんを抱えて仕事をしたり生活している人は増加している.がんと共存する人々のなかで,日常生活動作(ADL)を維持し,生活の質(QOL)を大切にしたいとする考え方が広まっている.生存できるかどうかに加えて,どれだけ人間らしく生活できるかが問われる時代になってきた.
一方で高齢化の進行は深刻であり,運動器疾患も増加の一途をたどっている.日本整形外科学会は,2007年に運動器の障害のために移動能力の低下した状態を,ロコモティブシンドローム,通称「ロコモ」として提唱し,運動器の健康の重要性を訴えてきた.さらに2018年度の日本整形外科学会「運動器と健康」PR事業のテーマとして,がんとロコモティブシンドローム,通称「がんロコモ」を提唱している.がんロコモとは,がん患者の運動器の障害による,移動能力が低下した状態とされる1).
がんロコモの予防や対策が,がんの運動器診療ともいえる.これらは,がん治療の継続やADL/QOLの向上,就労支援に貢献し,予後改善の可能性を広げることになる.整形外科医が積極的にがん診療にかかわることで,最期まで自力で動けることを助け,自分らしさを維持し,介護負担の減少による社会貢献をもたらすことにつながる.
本稿では,がんロコモの概念とその対策について解説し,横断的診療体制の必要性を述べる.
© Nankodo Co., Ltd., 2021