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は じ め に
骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)は,社会の高齢化に伴い増加しており,その適切な治療方針の策定は喫緊の課題である.OVFによる障害には,腰痛の遺残,脊柱変形,神経障害などがあり,これらは患者の生活の質(QOL)の低下につながる1).また,OVFと診断された患者は診断されていない患者と比較して,死亡率が15%高くなるなど,近年OVFは生命予後にまでかかわる問題ととらえられてきている2,3).したがって,痛みを伴うOVFが発生した場合には,症状を適切に管理し,偽関節や後弯化といった合併症を可能な限り回避する必要がある.
神経障害がないOVFに対しては,一般に保存的治療が行われる.保存的治療において,重要な位置を占めると考えられているものが装具治療である.装具治療の目的は,損傷された脊椎を安定化し,変形の進行を抑制し,痛みを軽減するなどであると考えられる4).装具は広く用いられている一方で,これまでの装具に関する研究は多くが骨粗鬆症のない椎体骨折に対して行われたものであり,装具のOVFに対するエビデンスレベルの高い報告はほとんどない.
本邦においても少数例の前向きランダム化比較研究(RCT)において装具治療の必要性,有効性が検討された.その結果によれば,装具の種類により疼痛・QOLについての改善度合いにおいて有意差を認めなかったものの,初期にギプス固定を行うことにより,初期の安静臥床(装具なし)と比較し,有意に圧潰の進行が抑制された5).しかしながら,その一方で,装具なし,軟性装具,硬性装具の比較において,硬性装具の有用性を認めないとするRCTも存在する6).したがって,これまでの研究においてはOVFに対する装具の有用性は明らかではなく,実際のところ,各臨床医の個々の判断によって,治療に使用する装具が決定されているのが実情である7).
そこで,われわれはOVFに対する保存的初期治療法の指針を策定することを目的とし,多施設共同でOVFに関する装具治療の治療成績に関する比較を目的とした大規模RCTを行った8)ので,その結果について本稿で報告する.
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