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は じ め に
『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』によれば,わが国における原発性骨粗鬆症患者は1,280万人と推計されている1).しかしこの推計は,2009年の報告に基づくものであり2),この報告からすでに10年以上が経過したわが国における高齢化のさらなる進行と骨粗鬆症治療の現状を考えれば,現在ではその数はより増加していると推測される.
高齢化社会が進行するわが国においては,健康寿命を延伸し,より健康で健やかな老後を送るための社会的,医療的基盤づくりが重要な課題となっており,日本老年医学会では,高齢になって筋力や活動力が低下した状態をフレイルと命名し,これまで老化現象として簡単に見過ごされてきた高齢者のactivities of daily living(ADL)低下に対する予防意識の啓蒙に努めている.また日本整形外科学会でも,筋肉,骨,関節などの運動器に障害が生じ,立つ,歩くといった機能が低下している状態をロコモティブシンドロームと定義し,その予防や知識の普及などに積極的に取り組んでいる.骨粗鬆症は,変形性膝関節症などとともに,フレイル,あるいはロコモティブシンドロームとなる主因疾患の一つであり,骨粗鬆症を予防し,対象者に対して積極的に治療に取り組んでいくことは,わが国の健康福祉政策においてきわめて重要である.
すべての疾患に当てはまることではあるが,骨粗鬆症においても,病期が進行してからあわてて加療を行うよりも,未病時からの予防,発症初期からの要加療者の拾い上げと早期からの適切な加療の開始が重要である.
女性における人生最大の骨密度喪失時期は閉経後の10年間であり,その間に腰椎の骨密度は15%低下すると報告されている3).一方,わが国の骨粗鬆症治療率は25%と,EU(ヨーロッパ連合)25ヵ国の治療率43%と比べ20%近く低いとされ4),また骨粗鬆症の薬物治療は,処方どおりに服薬できているのは開始後1年で50%未満にしかすぎず,薬物療法のアドヒアランスを高めることも重要な課題となっている.
近年では,国際骨粗鬆症財団(IOF)を中心に骨折を連鎖させない,stop at one運動が展開され,わが国でも二次骨折予防のための取り組みが注目されている.しかし本来なら,脆弱性骨折を生じるようになる前の段階から早期に啓蒙活動や治療介入を行い,bone massを維持しそもそも骨折を生じさせない,いわゆる一次骨折予防の段階から取り組むことが理想的であるといえる.
本稿では,簡便な骨粗鬆症スクリーニングを行うためのFracture Risk Assessment Tool(FRAX)活用法について紹介する.
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