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は じ め に
骨粗鬆症の定義は,骨強度が低下し骨折リスクが高くなる骨疾患と2000年に改定されたが,骨強度の正確な評価は現実には困難と考えられ,骨折発生頻度の抑制・骨折予防のための診断法はいまだ確立されていない.その原因として,椎体の骨脆弱部位は一様でなく散在しており,さらにその骨脆弱部位がただちに骨折するのではなく,骨折には骨折部位への応力の集中などの局所的要因の関与が考えられる.このことから,骨量,骨密度の三次元分布や応力が集中する部位を同定することが骨強度・骨折リスク評価には必要不可欠となる.
一方,現在普及している二重エネルギーX線吸収法(dual energy X-ray absorptiometry:DXA)による骨密度評価は三次元(容積)密度ではなく,深さ方向の情報は得られていない二次元(面積)密度である.骨密度が比較的高値でも脆弱骨折をきたす症例があり,二次元骨密度を指標とする骨脆弱性の定量評価には限界があり,真に骨強度に近い指標を提供する新たな診断法が求められている.
骨粗鬆症における骨強度評価法には骨生検による骨形態計測,マイクロCT,高解像度CT,MRIなどがある.さらに最近CTデータから有限要素モデルを三次元的に構築し,骨の材料特性,荷重面および荷重方向を設置することによりひずみ分布,応力分布,骨折荷重値および骨折部位が解析できる有限要素法(finite element method:FEM)が注目され,検討されるようになった1).しかし,このCT-FEMを用いた解析はCTをもとにmm単位のマクロの骨密度変化を反映した解析であり,100μm単位のミクロの海綿骨の形態変化を反映したものではない.
本研究では,臨床に用いられている多列検出器(multi-detector:MD)CTによるミクロの骨微細構造をもとにした骨折予測部位と臨床骨折部位とを比較し,骨折および骨折部位の予測の可能性を検証すると同時に,骨折形態から単軸椎圧迫のみならず,脊柱アライメントを考慮し日常生活動作を反映した椎体骨折機序を解明するものである.
© Nankodo Co., Ltd., 2020