Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
は じ め に
脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)は,硬膜外腔に電極を留置し,脊髄後索を電気刺激することにより,痛みの軽減や血流の改善をもたらす治療法である.痛みの部位に刺激を重ねて,鎮痛効果が発揮されることが基本である.SCSを行うためには,三つの機器が必要である(図1).① 電極が配置されたリード,② 電気刺激を発生させる刺激装置(ジェネレータ),③ 電気刺激を調節するプログラマである.リードとジェネレータは体内に植込まなければならない.
SCSによる痛み治療は,1967年にShealy1)らが末期がん患者の痛み治療に使用し,痛みを和らげることに成功したのが始まりである.本邦では,1971年にShimoji2)らが硬膜外ブロックの手技を用いて,硬膜外カテーテルの中にステンレス鋼線を通し,初めて脊髄を刺激した.その後,1988年に高度先進医療に認可され,1992年に保険適用となった.保険上,「薬物療法,他の外科療法及び神経ブロック療法の効果が認められない慢性難治性疼痛の除去又は軽減を目的として行った場合に算定する」となっており,痛み治療の最終的な治療法と位置づけられている.これまでの保険点数は,K190脊髄刺激装置植込術40,280点であったが,2018年4月からK190が二つに区分され,① 脊髄刺激電極を留置した場合24,200点,② ジェネレータを留置した場合16,100点となった.SCSの手技は2回に分けて行うことが多い.1回目はリードを植込む.約1週間試験刺激を行い,有効であるかどうかを確認する.有効であれば,2回目にジェネレータを植込み,リードと接続する.保険点数が分かれたことで,試験刺激がしやすくなったと考えられる.また,植込み後の管理料も設定されている(表1).
SCSの有効性は,神経障害性疼痛,虚血性疼痛(末梢血流障害,狭心痛)に高く,侵害受容性疼痛には効果が期待できない3).適応疾患の選択には,英国疼痛学会(The British Pain Society)が作成したSCSの反応性と適応疾患についてのリコメンデーションが有用である4)(表2).また,ドラッグチャレンジテストを用いて,神経障害性疼痛の関与を推測し,SCSの適応を検討する場合もある5,6).
SCSの製品は,当初日本メドトロニック社の1社のみであったが,2010年にセント・ジュード・メディカル社(現アボットメディカルジャパン社,以下,アボット社),2012年にボストン・サイエンティフィックジャパン社(以下,ボストン社)が参入した.現在,3社の製品が使用可能となっている.最近,製品の進化が早くなり,治療の進歩が目覚ましい.製品の変遷,性能の進化について解説する.
© Nankodo Co., Ltd., 2018