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は じ め に
急速な超高齢化社会への突入と,生活習慣病などの内科的薬物治療の著しい向上により,運動器の虚弱した高齢者が増加している.それに伴い重症骨粗鬆症高齢者も増加し,普通に生活をしていただけで生じた(もしくはほとんど外傷がないにもかかわらず生じた)転位の少ない下肢脆弱性骨折が増加傾向にある.その多くは下肢の疼痛を主訴に受診し,X線像やMRIで骨折に気づくことも少なくない.これらがギプス固定や安静による保存的治療を選択された場合,一定期間の免荷が必要となる.また,運動能力が低下した患者であれば,免荷を守るための松葉杖歩行が困難なため,独居老人の場合は自宅生活が続けられなくなることもある.免荷は廃用症候群を進め,また入院安静はせん妄や認知症を誘発することにもつながる.
また,一定期間の免荷後,仮骨形成を認め,荷重開始を許可しても,骨癒合が完全に得られるまでは骨折部の疼痛が残存し,受傷前のような歩行がむずかしい症例も数多く経験する.一方,免荷しても荷重に耐えられるほどの骨癒合が,いつまでたっても得られない症例は,骨折部の疼痛に骨萎縮による疼痛が加わることもあり,悪循環に陥ることもある.
秋田県では,高齢者下肢脆弱性骨折に対し,骨粗鬆症骨に対しても固定力が強いとされるIlizarov創外固定器1,2)を用いて骨接合術を施行し,リハビリテーションにおいて早期荷重を行っている3).さらに,低出力超音波パルス(LIPUS)とテリパラチドを併用し4~6),骨癒合促進と骨粗鬆症治療を同時に行うことで,少しでも早く骨癒合を達成し,患者にとっては不快なIlizarov創外固定を極力早くはずすことができるように工夫している.
本研究の目的は,高齢者の下肢に生じた脆弱性骨折に対するIlizarov創外固定とテリパラチド,低出力超音波骨折治療器の併用による治療効果を後ろ向きに調査し,検討することである.
© Nankodo Co., Ltd., 2018