肺高血圧症-初期診断・治療・管理のすべて 難治性肺高血圧症に対する最新内科治療とその限界
肺高血圧症に対する肺移植の適応と成績
星川 康
1
,
松田 安史
,
渡邉 龍秋
,
野田 雅史
,
岡田 克典
1東北大学病院 呼吸器外科
キーワード:
Adrenergic Beta-Antagonists
,
術後合併症
,
術後管理
,
肺移植
,
肺高血圧症
,
肺水腫
,
血液透析濾過
,
失血-外科
,
出血-術後
,
治療成績
,
登録
,
ECMO
Keyword:
Adrenergic beta-Antagonists
,
Hypertension, Pulmonary
,
Pulmonary Edema
,
Postoperative Care
,
Postoperative Complications
,
Registries
,
Extracorporeal Membrane Oxygenation
,
Lung Transplantation
,
Blood Loss, Surgical
,
Hemodiafiltration
,
Treatment Outcome
,
Postoperative Hemorrhage
pp.471-474
発行日 2016年3月1日
Published Date 2016/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2016187527
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肺高血圧症に対する肺移植施設紹介の適応は,内科的治療不応,急速な病態進行,肺動脈性高血圧症(PAH)を標的とした点滴静注薬使用,肺静脈閉塞症(PVOD)あるいは肺毛細血管腫症(PCH)の診断または疑いとされている.肺移植待機登録のためには,検査データ収集・適応判断,患者・家族への1回目のインフォームドコンセント(IC),地区肺移植検討委員会での審査・承認,2回目のIC,中央肺移植適応検討委員会での審査・承認を要する.これらの手続きには通常約3ヵ月を要する.肺高血圧症に対する肺移植の標準術式は脳死両肺移植である.本邦の肺高血圧症患者の肺移植後5年生存率は70%弱で,欧米を中心とした国際登録データにおける約50%に比し良好であるが,欧米同様2割弱におよぶ術後早期死亡が最大の課題である.肺高血圧症患者の多くでは,長期間に及ぶ高肺血管抵抗を背景とした左右心のアンバランス(強大な右室と潜在的左心不全)が招来されている.肺移植術後急性期にはこのアンバランスによりしばしば肺循環障害・肺水腫が惹起され,ときに重篤なprimary graft dysfunctionをきたす.術後急性期管理のポイントは,鎮静,β遮断薬による右室の過剰収縮抑制に加え,必要に応じて持続血液透析濾過法(CHDF)やvenoarterial-extracorporeal membrane oxygenation(ECMO)を適切に使用することである.術中,術後の大量出血もしばしば問題となるため,側副血行路の発達した肺門剥離の際の丁寧な操作とECMO使用時の厳密な凝固時間コントロールが求められる.
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