肺高血圧症-初期診断・治療・管理のすべて 難治性肺高血圧症に対する最新内科治療とその限界
慢性血栓塞栓性肺高血圧症の低酸素血症に対する治療
大郷 剛
1
1国立循環器病研究センター 肺循環科
キーワード:
バルーン血管形成術
,
血栓塞栓症
,
動脈内膜切除術
,
肺高血圧症
,
肺塞栓症
,
酸素欠乏
,
在宅酸素療法
Keyword:
Hypoxia
,
Angioplasty, Balloon
,
Endarterectomy
,
Hypertension, Pulmonary
,
Pulmonary Embolism
,
Thromboembolism
pp.465-469
発行日 2016年3月1日
Published Date 2016/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2016187526
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慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は器質化した血栓が肺動脈に存在し,肺高血圧症をきたす疾患である.CTEPH患者は進行性の呼吸困難症状と運動耐容能の低下,そしてAa-DO2の開大を伴う低酸素血症を認める.CTEPHにおける低酸素血症となるメカニズムは主に換気血流不均衡(VA/Qミスマッチ)と,それに加えて低心拍出量に伴うPVO2の低下である.CTEPHの低酸素血症の根本的な治療としてはVA/QミスマッチとPVO2の改善を目指すことが必要である.肺血栓内膜摘除術(PEA)により血行動態や運動耐容能が大きく改善し予後が改善するだけでなく酸素化も改善する.カテーテル治療である肺動脈バルーン拡張術(BPA)が登場し,血行動態や運動耐容能,右心機能の改善などの有効性データが出てきているが,BPAの酸素化の改善は詳細な検討はまだされていない.当院での症例の結果からのBPAも同様で,十分に血流を改善させれば酸素化も改善する.酸素化を十分に改善させるには可能な限り広範囲に閉塞,狭窄血管を治療し,できる限りVA/Qミスマッチを減らすことが必要である.予後を超えた目標として酸素化の正常化および在宅酸素療法からの離脱を指標に置くのは現状では放射線被曝の問題などの治療のデメリットを考えたうえで患者個人の治療メリットを考えて行う必要があり,その意義に関しては今後の検討が必要である.
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