発行日 2012年7月1日
Published Date 2012/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2012315589
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34歳男。約2年前にバセドウ病と診断され治療を開始したが、自己中断していた。その後、周期性四肢麻痺、体重減少、全身倦怠感を自覚するも放置し、浮腫、動悸、呼吸苦で近医入院となった。甲状腺クリーゼと診断され治療開始されたが、肝・腎不全の進行、心不全による呼吸状態の悪化したため、挿管のうえ転院となった。頸部に5×9cm大で弾性軟の甲状腺腫を触知し、両側頸静脈は怒張し、呼吸音は右前胸部で低下し、心尖部に最大収縮期雑音を聴取した。肝・腎機能障害、高Na血症、高K血症、甲状腺機能亢進所見、甲状腺中毒症、中枢神経症状、発熱、頻脈、消化器症状を認めた。X線で心拡大、両肺野うっ血像、心不全も認め、甲状腺クリーゼと診断し、MMI、KIで治療を開始した。心不全に対しては塩酸プロプラノロール、相対的副腎不全にヒドロコルチゾンを投与した。血小板低下、DICの併発、AST、ALTの上昇、PT%の著明な低下を認め、昏睡型急性肝不全と診断した。血漿交換(PE)、持続的血液濾過透析(CHDF)を行ったところ改善傾向となり、PT%は正常化、Creも改善し、PE、CHDFを離脱した。著明な甲状腺腫大と甲状腺クリーゼ再燃を考慮し、第79病日に甲状腺全摘出術を施行した。現在は職場復帰しADLは重筋作業が行えるまでに改善した。
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