発行日 2012年2月1日
Published Date 2012/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2012185413
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34歳女。30歳頃から統合失調症の治療中で、2年前に妊娠を契機に精神症状が悪化し、人工妊娠中絶を行った既往がある。今回、妊娠が判明したが産婦人科に通院せず、悪阻が強くなり食事摂取不良、下痢、嘔吐、意識障害を認めたため救急搬送された。意識JCSIII-200、口腔内や皮膚は著明に乾燥し、白血球増多、脱水、高血糖を認めた。TSHは抑制されFT4・FT3が上昇し、甲状腺中毒症を呈した。TSAbは上昇したが、TRAb、抗サイクログロブリン抗体、抗TPO抗体は陰性で、hCGは妊娠週数に比して著明に上昇し、頸部超音波で血流は豊富であった。甲状腺クリーゼと診断し、抗甲状腺薬(MMI)・無機ヨード・β遮断薬・副腎皮質ステロイド投与と脱水・高血糖の補正を行い、第4病日に意識障害は改善した。妊娠継続は困難と判断され、甲状腺ホルモン正常化後の妊娠13週に人工妊娠中絶を行った。hCGの著明高値と甲状腺ホルモン高値はともに低下し治療中止後も再発せず、妊娠一過性甲状腺機能亢進症(GTH)と診断した。
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