発行日 2010年8月1日
Published Date 2010/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2010300069
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60歳男。左第V指基節骨骨幹部骨折に対し、全身麻酔下に観血的整復固定術が予定された。約3分間の酸素化後、ディプリバン、マスキュラックスを投与直後にECG II誘導で突然のST上昇を呈した。SpO2波形が消失し、血圧測定不能となり、気管内挿管後の呼気終末CO2値は15mmHgとなった。蘇生処置を行い、ST上昇7分後に最初のアドレナリンを投与した。蘇生中、アドレナリンを6回投与したがショック状態は改善せず、ST上昇42分後に補助循環を開始した。その時、下肢の僅かな発赤に気づき、アナフィラキシーショックの可能性を疑った。心臓カテーテル検査を行ったが、冠動脈に有意狭窄は認めず、ST上昇は冠動脈の攣縮による心電図変化と診断された。ICU入室し、第3病日には左室前壁から中隔にかけて壁運動異常を認めたが、第5病日には認めず、左室駆出率は55%から72%に回復した。その後、今回の被疑薬のブリックテストを施行したところ、ディプリバンが強陽性を示し、ディプリバンによるアナフィラキシーショックと診断した。経過は良好で、神経学的異常所見を認めず発症後75日に退院した。
©Nankodo Co., Ltd., 2010