発行日 2010年8月1日
Published Date 2010/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2010300068
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59歳男。体動困難、幻覚、嚥下障害および発熱を主訴とした。血液検査や画像検査、髄液検査で異常はなく、アルコール関連疾患、特にWernicke脳症等を疑った。ビタミンB群を投与したが効果はなく、家人の話からアルコール摂取を入院前の半年間はほとんどしていないことから、これらの疾患は否定された。そこで、統合失調症の初期症状、若年性アルツハイマー型認知症、また幻視を伴うパーキンソン症候群としてレビー小体型認知症等を鑑別疾患として考慮した。既往に難治性皮膚疾患があったことから、ナイアシン欠乏症として知られるペラグラ脳症を疑い、ニコチン酸の投与を開始したところ、投与後3日に両上肢の振戦、眼球運動制限が消失した。幻視や皮膚症状も徐々に軽減し、投与後12日に嚥下障害もほぼ消失した。認知機能も改善し、更に精神症状も安定し、入院後2ヵ月半に退院となった。治療前の血中ニコチン酸は正常範囲であったが、ニコチン酸投与への反応性が良好であったことからペラグラと診断し、家族歴から兄弟5人中2人がアルコール関連精神疾患であることが判明したため遺伝性の代謝障害の関与が疑われた。
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