発行日 2010年7月1日
Published Date 2010/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2010296343
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
48歳女。患者は全身倦怠感を主訴とし、近医で肝機能障害を指摘され、受診となった。血液検査ではトランスアミラーゼ、ビリルビン酸等が高値で、高度肝障害が認められた。またHBs抗原、HCV抗体はともに陰性であったものの、IgM HBc抗体30.2s/co、HBc抗体陽性であった。以上より、本症例はB型急性肝炎と診断され、安静の上、高カロリー低脂肪高蛋白食摂取を行い、1日500mlの維持液の点滴が施行された。その結果、肝機能改善により第21病日目に退院なったが、入院中、常に陰性であったHBs抗体が、退院後の第64病日目に陽性化し、抗体価は上昇を認めるようになった。更に肝炎の急性期を通じてHBs抗原が検出されなかったことから、B型肝炎ウイルスの遺伝子解析を行ったところ、HBs抗原の抗原性の中心である抗原決定基aの124番から147番目のアミノ酸配列の中で136番と143番のアミノ酸がともにセリンに変異していたことが判明した。尚、HBs抗原のmRNAの転写プロモーター領域に変異を認めず、HBs抗原が検出されなかったのは、早期に消失したためだと考えられた。
©Nankodo Co., Ltd., 2010