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症例1(79歳男性)。木の剪定中に3~4mの高さの脚立から転落、両下肢が動かないことから著者らの施設へ救急外来搬送となった。所見では頸椎単純X線像でC6の前方すべりを認め、左C6/C7で椎間関節脱臼、C7では椎体後壁損傷が認められた。また、MRIではT2強調画像でC6/C7に高信号領域が認められ、脊髄後方には血腫が認められた。以上より、本症例はFrankel分類CのC8頸髄損傷と診断され、左C6/C7の椎間関節脱臼に対して透視下で整復したが不安定性があり、C6/C7前方除圧固定術が施行された。しかし、手術と同時期から血清Naが低下がみられ、術後2日目からは意識障害を呈した。抗利尿ホルモン、低浸透圧血症、尿浸透圧が高張尿であることから抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)が疑われ、水制限とNa補充による治療を開始したところ、血清Na値の正常化とともに意識状態も回復した。その後、筋力も次第に改善し、患者は歩行可能となち、退院となった。症例2(82歳男性)。自宅内でつまずいて転倒し、左前頭部を打撲した際に頸部を過伸展した。その直後から下肢脱力が出現したため、著者らの施設へ救急外来搬送された。所見では頸部CTでC5~C7に後縦靱帯骨化症が認められた。また、脊柱管前後径は最狭窄部で3.7mmであったが、頸椎MRIでもC5/C6レベルでも同様で、著しく脊髄を圧迫していた。以上より、本症例はFrankel分類CのC6頸髄損傷と診断され、C3~C7椎弓形成術が施行された。しかし、術後2日目より血清Naの低下を認め、同時に意識障害を来したため、SIADHなどを疑い、水制限に加えてNa補充による治療を開始したところ血清Na値は正常域まで回復した。以後、意識状態および筋力の改善がみられ、患者は近医へ転院となった。
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