発行日 2013年3月1日
Published Date 2013/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2013191393
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
上臼蓋骨折の5例を経験した。5例中1例(症例2)は同一症例で、これを含め3例が女性、年齢71~86歳であった。残り1例は51歳男性例であった。女性例3例はいずれも外傷や転倒などの明らかな原因なく股関節痛や大腿部痛を訴え、歩行困難や歩行不能に至っていた。症例2を除く3例はX線像で異常を認めず、対象全例ともにMRIで上臼蓋部に骨折所見を認め、骨シンチグラムで同部位に集積があり、いずれも診断は上臼蓋脆弱性骨折であった。症例2は退院後1ヵ月に反対側の上臼蓋脆弱性骨折を来たし、MRI、骨シンチグラムで大腿骨頭までにも異常を認め、通常の上臼蓋骨折とは異なる画像所見であり、関節軟骨への損傷の存在が考えられた。なお、反対側の上臼蓋脆弱性骨折から8ヵ月後に変形性股関節症となり、5ヵ月後に末期変形性股関節症となった。51歳男性例は、前腕での骨密度は正常であり脆弱性骨折とは言い難いものの、若年期からの糖尿病と糖尿病性末期腎不全があり骨質劣化の可能性が示唆された。椅子からの転倒といった比較的小さな外傷が契機であり、何らかの原因による上臼蓋脆弱性骨折例と考えられた。
©Nankodo Co., Ltd., 2013