発行日 2009年2月1日
Published Date 2009/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2009159684
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症例は53歳女性で、原動機付き自転車で走行中に転倒し、左母指中手指節(MP)関節を屈曲位のまま地面について受傷、その直後から左母指の自動運動不能となり来院となった。初診時、左母指基部の腫脹と皮下出血を認め、母指指節間(IP)関節とMP関節の自動運動不能であり、X線像では左母指末節骨の横骨折とMP関節の掌側亜脱臼を認めた。母指MP関節は徒手整復にて整復位が得られたが安定性が得られず、MP関節造影ではMP関節背側に造影剤の漏出を認めたため観血的整復施行となった。術中所見では左母指MP関節背側に縦皮切を置くと直下に母指中手骨の関節軟骨がみえ、指背腱膜と関節包が基節骨基部を覆うようにMP関節内に介在していた。長母指伸筋腱は中手骨骨頭に対して尺側に転位していたが連続性は保たれており橈尺側副靱帯の損傷はなく、介在していた軟部組織を引き上げることで整復でき、母指の屈曲・伸展運動が可能となった。母指中手骨骨頭が指背腱膜から脱出していた部位の裂孔残存部は縫合し、MP関節をK鋼線で伸展位固定した。術後4週でK鋼線を抜去、術後3ヵ月時には局所の痛みや母指MP関節の不安定性は消失していた。
©Nankodo Co., Ltd., 2009