発行日 2009年2月1日
Published Date 2009/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2009159683
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症例は電気工事の仕事をしている30歳男性で、半月ほど前から右手関節橈骨部痛が増悪し、箸を使う際にも疼痛が出現して近医を受診、内服薬・外用薬・装具にて治療されたが、疼痛が軽減せず来院となった。初診時、右手関節橈側に腫脹と疼痛を認め、外来にて局所麻酔薬及びステロイドを伸筋腱第1区画内に注入すると一時的に症状は軽快した。3回の腱鞘内注射を行ったが仕事に支障をきたすということで、de Quervain病の診断にて局所麻酔下に手術施行となった。術中所見では橈骨茎状突起の背側を横切開して展開、腱鞘遠位で長母指外転筋腱(APL)と短母指伸筋権(EPB)を確認して腱鞘を切開し隔壁を切除してAPLとEPBを開放した。これらをよけると伸筋腱第1区画内で掌側深部に別の1本の細い不明腱が存在しており、APL・EPB周囲の腱鞘には炎症所見を認めなかったが、不明腱の周囲の腱鞘は肥厚していた。この不明腱を中枢側にたどると伸筋腱第1区画の途中で腱鞘の尺側壁を貫通し、橈骨骨膜下で橈骨に溝を掘るように横走しLister結節の尺側を回り中枢側へ走行しており、更に中枢をたどるとEPLと同じ筋腹に至っていた。以上より、EPLの破格がLister結節を回った後に骨膜下を走行して伸筋腱第1区画に進入し、区画内を走行しており、この破格が疼痛の原因と考え、中枢は筋腱移行部で切離し、遠位は手関節皮切部よりできる限り牽引して切除した。術後1ヵ月で症状はほぼ軽快し、握力は健側の96%となり、手関節の可動域制限もなく復職した。
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