発行日 2008年1月1日
Published Date 2008/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2008091693
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症例は57歳女性で、左殿部腫瘤を自覚した。良性顆粒細胞腫として腫瘍切除術を行った。摘出標本は好酸性の顆粒を細胞質に含む腫瘍細胞が密に存在し、核小体の濃染を認めるものの、核の大小不整はなかった。病理診断は良性顆粒細胞腫であった。術6ヵ月後、MRIで局所再発を認めた。術2年後には労作時呼吸困難、下腿浮腫が出現した。胸部単純X線像・CT像は心胸郭比62%、心嚢液貯留、左右両側の胸水貯留、肺動脈弁部に造影される腫瘍を示した。心嚢液はPapanicolaou分類class IVで、広い細胞質に、顆粒を伴う核腫大と核クロマチンの増量を認める異型細胞がみられた。これらの細胞像は手術時の検体と同様で、顆粒細胞腫の心転移と考えられた。術2年4ヵ月後(心転移の診断から4ヵ月後)、死亡した。顆粒細胞腫の良・悪性の鑑別は非常に困難で、この症例も当初は良性顆粒細胞腫の病理診断であったが、その後、再発・転移を来たし、臨床的には悪性顆粒細胞腫であった。
©Nankodo Co., Ltd., 2008