発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2003301969
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45歳女.左下肢の痺れ感と温痛覚鈍麻を自覚し,右下肢の脱力も出現した.MRI矢状断像のT2強調像において,Th5/Th6高位で脊髄が腹側に著明に偏位し,脊髄背側のクモ膜下腔の拡大が認められた.椎弓切除後,硬膜を切開し,脊髄背側を確認したが,クモ膜嚢腫等の病変は認めなかった.糸状靱帯を切除して脊髄腹側を観察すると,脊髄は急峻な角度で硬膜欠損部へ嵌頓していたが,愛護的に牽引することで容易に整復可能であった.硬膜は二重構造を呈しており,頭側に41mm,尾側に50mmのポケット形成が認められた.内層硬膜を切開し,ヘルニア孔を拡大することで嵌頓徴候は完全に消失した.裂孔辺縁から採取した内層硬膜の病理組織学的検索で,組織は縦走する膠原線維性の結合組織から成り,炎症細胞の浸潤もなく,通常の硬膜と同様の構造であった.術後9ヵ月経過し,増悪傾向はないが知覚低下,下肢筋力低下は残存している
©Nankodo Co., Ltd., 2003