発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2016316470
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53歳女性。マンモグラフィによる乳癌検診で右乳房の局所非対称性陰影を指摘され、要精検で著者らの施設へ受診となった。両側乳腺嚢胞と診断後、自己検診の励行と2年後の乳癌検診の受診を勧められたが、今回、左乳房外上部の腫瘤を主訴に再診となった。所見では左乳房の乳輪縁から3.2cm離れた外上部に2.3×2.1cm大の弾性硬で境界やや不鮮明な腫瘤が触知された。マンモグラフィでは左乳房U部下方の境界は明瞭平滑であるが、上方が不明確な腫瘤陰影の中に石灰による液面形成像とその中に小腫瘤様にみえる部分を認め、外側部に位置する腫瘤陰影中には淡い石灰化と索状の石灰化が認められた。また、超音波では嚢胞状陰影の底部から突出する低エコー部分を不規則な帯状の高エコーが囲み、不均一な極低エコーレベルの内部エコーもみられた。一方、穿刺吸引細胞診では粘液物質中に良性の乳管上皮がわずかに認められ、class IIIと判定、粘液瘤様腫瘤(MLT)が示唆された。以上、これらの所見を踏まえて、局所麻酔下に左乳房外の乳腺組織と脂肪組織を含めて腫瘤を摘除したところ、摘出腫瘤は2.2×1.2×1.3cm大で、病理組織所見では淡い粘膜で満ちた大小2個の嚢胞状病変を認め、大きい方は粘液中に砂粒状石灰が集簇して浮遊し、粘液の間質内漏出所見もみられた。尚、MLTと診断され、目下、術後1年半が経過するが、異常所見は認められていない。
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