発行日 2016年7月1日
Published Date 2016/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2016291572
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
43歳女。3~4年前から右鼠径部腫瘤を自覚していたが、放置していた。1年前から増大傾向を示し、月経時に痛みを伴うようになったため、手術目的で入院した。右鼠径部恥骨上に30×20mm大の弾性硬、境界明瞭で可動性良好な腫瘤を触知した。腹部CTで右鼠径部皮下に20×16mm大の辺縁不整で内部不均一な腫瘤を認め、それに連続して鼠径管内に嚢胞性部分を認めた。MRI検査では、右鼠径部皮下にT1強調像・T2強調像とも低信号を呈する腫瘤を認め、右鼠径管内にT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を呈する嚢胞状の腫瘤を認めた。これらの所見から、Nuck管水腫を伴う右鼠径部子宮内膜症を強く疑い、確定診断目的に外科的切除を行った。右鼠径管に沿って皮膚切開すると、外鼠径輪の内側尾側の恥骨上、皮下に25×20mm大の腫瘤が認められ、子宮円索に強く固着していた。鼠径管を開放すると、硬く変性した子宮円索が認められ、周囲と強固に癒着していたため、子宮円索を周辺組織から剥離しテーピングを行った。Nuckを切開・開放すると、内部に液体成分はなく、腹腔内と交通していた。腫瘤を周囲から剥離し、子宮円索を腫瘤の末梢側で切離した。さらに、子宮内膜症の周辺組織への機械的移植や取り残しがないように内鼠径輪レベルで円索・Nuck管を結紮・切離し、腫瘤とともに一塊として摘出した。摘出標本の病理組織所見は、腫瘤部の線維性結合組織内に子宮内膜様組織を認め、子宮円索内にも子宮内膜性の変化を認めた。Nuck管内には内膜様組織を認めなかった。術後経過は良好で、症状の再燃は認めていない。
©Nankodo Co., Ltd., 2016