発行日 2015年5月1日
Published Date 2015/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015265075
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40歳男性。健診にて脂肪肝を指摘後、精査のCTにて後腹膜腫瘍を認め、精査治療目的で著者らの施設へ紹介となった。入院時、腹部造影CTでは膵背側に径65×60mm大の境界明瞭な腫瘤が認められ、低濃度腫瘤または嚢胞性腫瘤を疑われた。一方、腹部造影MRIではT1強調像で低信号、T2強調像で中間信号に次いで、内部には広範囲高信号がみられ、広範な壊死を伴う充実性腫瘤や多房性の嚢胞性病変が疑われた。以上、これらの所見から本症例は粘液変性の強い神経原性腫瘍や後腹膜粘液産生腫瘍が考えられ、悪性腫瘍の可能性も否定できず、手術の施行となった。術中所見ではKocherの十二指腸授動術により腫瘍が露出、この腫瘍は弾性軟であり、周囲組織との癒着は比較的疎で電気メスにより容易に剥離できた。以後、腫瘍に沿い超音波凝固切開装置で鋭的に剥離し、上腸間膜動脈右縁では上腸間膜脈動脈にテーピングを行い、これを牽引しながら腫瘍との間を展開し神経叢を鋭的に切離して腫瘍摘出を完了した。その結果、摘出標本は70×65×65mm大で被膜を有する弾性軟の腫瘍であり、病理組織学的所見から神経節神経腫であった。尚、術後経過は良好で術後10日目に患者は退院、術後1年10ヵ月経過現在、再発は認められていない。
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