発行日 2010年6月1日
Published Date 2010/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2010242784
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72歳男。患者は右下腹痛部腫瘤を主訴とした。所見では右下腹痛部に手拳大の可動性に乏しい腫瘤が触知されたが、腹膜刺激症状はなかった。超音波では腹直筋との境界が不明瞭で、内部構造が不均一な腫瘤が認められ、またCTでは右腹直筋下に辺縁増強効果を示す低濃度腫瘤があり、直下の小腸係蹄に壁肥厚と増強効果がみられた。上・下内視鏡で明らかな異常は指摘できず、確定診断のため手術を施行したところ、腫瘤は腹直筋に直接浸潤しており、合併切除して腹壁から遊離していた。更に腫瘤は大網・小腸を巻き込んでおり、小腸は浸潤性に巻き込まれて剥離不能であった。病理組織学的には腫瘤は膿瘍と肉芽からなる慢性炎症性腫瘤で、膿瘍内に放線菌塊が存在していたことより、本症例は放線菌症と診断され、抗生物質は術前、術後5時間目に投与した以外、使用しなかった。だが、術後の経過は良好で、目下、手術から3ヵ月経過で再発の徴候はみられていない。尚、回盲部を除く小腸放線菌症の我が国での報告は1983~2009年までを検索した限り、本症例以外には確認されなかった。
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