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2002~2005年に閉鎖式ドレーンを留置した大腸癌手術患者226症例を対象に、ドレーン留置の意義について検証した。対象は結腸癌167例・直腸癌59例で、挿入したドレーンは全例8Frプリーツドレーンで落差式に吸引し、排便確認後に抜去した。対象におけるドレーン排液の性状と排泄量、縫合不全、腹腔内膿瘍、出血などに対するドレーンの役割、ドレーン留置に起因する合併症などについて検討した。その結果、排液の性状異常を7例で認め、うち6例は縫合不全・1例は腹腔内膿瘍を形成しており、全例の平均総排液量は346ml,非縫合不全例では平均328mlで、縫合不全例の平均972mlと非縫合不全例より有意に多量であった。縫合不全は術後3~5病日に発生し、全例ドレーンから便汁様排液を認め、6例中4例ではドレナージ良好で保存的に軽快したが、2例では汎発性腹膜炎をきたしループ式人工肛門造設術及び再度のドレナージを要した。腹腔内膿瘍は結腸癌の3例に発症し、膿瘍の原因では1例はドレナージ不良と考えられたが、2例は留置部位と別の位置に発生した膿瘍で原因は不明であった。術後出血は結腸癌・大腸癌共に検討期間内には認めず、逆行性感染は結腸癌・直腸癌に各1例みられ、両者とも創感染と同時又は感染巣開放後に発生した。起因菌が同定できたのは1例のみで、創部・ドレーン共にBacteroides sp.を検出した。その他、ドレーン孔よりの大網の逸脱を結腸癌の1例で認めたが、還納は可能であった。以上より、大腸癌手術におけるドレーン留置に関して、結腸癌症例ではその意義は少なく、留置した場合でも早期抜去が望ましいと考えられ、直腸癌症例では縫合不全の早期発見や保存的治療に有用であり、留置すべきと考えられた。
©Nankodo Co., Ltd., 2008