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症例1:62歳男。1ヵ月前から内痔核が用手的還納不能となり、乏尿から無尿、血圧低下、ショック状態となった。全身紅潮し冷感著明で、凝固能障害、高度炎症反応、肝・腎機能障害を認めた。CTで肛門から下部S状結腸の周囲にdirty fat signを認め、肛門鏡では直腸粘膜は暗赤色浮腫状を呈した。肛門周囲蜂窩織炎によるseptic shockと診断し、感染巣除去のため直腸切断術を施行したが、切離面の出血制御困難となり手術を終了した。術後、septic shockとアシドーシスに対しては積極的輸血を、急性腎不全に対しては持続血液濾過透析(CHDF)を、播種性血管内凝固症候群(DIC)に対してはgabexate mesilateを用いたが、術後31時間に死亡した。症例2:54歳男。近医で内痔核を認め、ショック状態と肝腎障害から当院搬送となった。凝固障害、肝・腎機能障害を認め、下部消化管内視鏡検査で肛門管から18cmまで浮腫状を認めた。CTから直腸肛門管周囲にdirty fat signと気腫を認めた。ショック遷延時間が不明な多臓器障害状態であったが、肛門周囲壊死性筋膜炎(Fournier's gangrene)によるseptic shockと診断した。ICUにて術前循環動態の改善を図るも悪化し続け、経肛門的ドレナージの緊急手術を行ったが、術後4時間で死亡した。以上のことから、severe sepsis、septic shockに長時間曝された重症肛門周囲感染(Fournier's gangrene)は、一時回避的治療戦略のダメージコントロールを行っても救命が困難で、外科手技と集中治療双方での積極的な診療戦略が必要と考えられた。
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