発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2006231512
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1995年4月~2005年9月に経験した85歳以上の高齢者の腹部緊急手術症例25例(平均88.1歳,男9例,女16例)を対象とした臨床的検討を行った.症状発現から入院までは平均1.2日,入院から手術までの平均期間は3.0日であった.死亡例は7例で,生存例の平均在院期間は28.8日であった.術前併存症はほぼ全例に認められ,16例(64%)が複数合併していた.併存症としては循環器疾患(心疾患,高血圧),脳神経疾患,呼吸器疾患が多かった.治療対象となった腹部疾患は,腹膜炎14例,絞扼性イレウス3例を含むイレウス8例,上腸間膜動脈血栓症1例,腹部刺創2例であった.腹膜炎の内訳は,上部消化管穿孔6例,下部消化管穿孔6例,S状結腸壊死2例であった.術後合併症として呼吸器合併を認めた4例は全例が死亡した.手術部位感染は8例に認め,うち3名が腹膜炎を起こして2名が死亡した.多臓器不全を併発した6例は全例が死亡した.生存した18例で自宅退院したのは8例のみで,8例は転院,1例は老人施設に転所,1例は入院中である.生死と年齢には関連性は認められず,症状発現と入院までの期間は死亡例が短い傾向にあった.POSSUMスコア(Physiological and operative severity score for the enUmeration of mortality and morbidity score)で比較すると術前の全身状態が悪く,手術侵襲が高い症例ほど死亡例が多いことがわかった
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