臨床経験
瘤化した異常動脈を認めた肺底動脈大動脈起始症
安東 由貴
1
,
山下 芳典
,
坪川 典史
,
高崎 泰一
,
谷山 大樹
,
倉岡 和矢
,
豊田 尚之
,
三村 剛史
,
原田 洋明
1大分県立病院 外科
キーワード:
開胸術
,
血管外科
,
動脈瘤
,
肺切除
,
吻合術
,
三次元イメージング
,
血管奇形
,
胸部CT
,
肺動脈起始異常
Keyword:
Aneurysm
,
Anastomosis, Surgical
,
Pneumonectomy
,
Thoracotomy
,
Vascular Surgical Procedures
,
Imaging, Three-Dimensional
,
Vascular Malformations
pp.1003-1007
発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2017078313
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40歳女性。禁煙外来受診時にばち状指を指摘され、原因精査を目的に行った胸部CTで左肺底動脈大動脈起始症と診断され、呼吸器外科へ紹介となった。入院時、胸部CTでは左肺下葉肺底部を中心に肺血管陰影の増強やスリガラス状陰影がみられたほか、3D-CTでは胸部下行大動脈から分岐し、肺内で瘤が形成され、左肺底区を灌流する異常流入動脈が認められた。この異常血管は下肺静脈を圧排し、V6は異常血管を迂回するように蛇行していたが、気管支は正常に分岐し、分画肺は認められなかった。以上より、本症例は肺底動脈大動脈起始症と診断された。治療は心臓血管外科医の判断で、小開胸下に結紮し、異常血管を迂回するV6を温存することは不可能と判断し、肺底区のみならず左下葉切除を行う方針となった。術中所見では左下葉肺表面の毛細血管は拡張し、うっ血がみられ、肺靭帯を切離すると、下行大動脈から左肺底区に流入する異常流入動脈が認められた。この異常血管の中枢側をモノフィラメント縫合糸フェルト付きで巾着縫合した。更に絹糸で結紮し、末梢側をクランプ後、異常血管を切離した。処理後、肺表面のうっ血は消出した。続いて、下肺静脈、そしてA6と下葉気管支を切離して左下葉を摘出した。その結果、術後は経過良好で、患者は術後5日目に退院した。術後8ヵ月現在、無症状で外来経過観察中である。
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