発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2017078311
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61歳男性。突然、胸部痛と息苦しさが出現し近医を受診、胸部X線像で右気胸と診断され、著者らの施設へ紹介となった。受診時、胸部X線像では右肺は完全虚脱で縦隔偏位、胸水貯留を認めた。緊張性気胸の診断で右胸腔ドレナージを施行したところ、ドレナージ後の胸部X線像では肺虚脱は改善傾向を示し、胸部症状の増悪がないことを確認してから-8cmH2Oによる持続吸引を開始した。ドレナージ開始から約1時間後、少量の血性排液が出現、1時間20分後には気漏は消失し、呼吸性動揺も消失したが、胸部X線像では右胸腔に著明な胸水貯留がみられ、血気胸と診断された。右背側に胸腔ドレーンを追加留置すると約400mlの血性排液がみられた。造影CTでは右胸腔上部背側に造影剤の血管外漏出を認め、活動性出血を伴う血気胸の診断で全身麻酔下に緊急手術を行なった。術中所見ではドレーンを抜去し同部位からポートを留置して胸腔鏡下で手術を開始、胸腔内には凝血塊と血性胸水がみられた。持続的な出血で、胸腔内出血点の同定が困難なため小開胸を加え、凝血塊を除去した。血性胸水を吸引すると肺尖部縦隔側胸壁に断裂した血管を認め、シーリング装置で止血した。更に肺尖部には肺気腫の原因と考えられる気腫性肺嚢胞を認め、気漏とその近傍に断裂した血管断片を認めたため、自動縫合器を用いて肺部分切除術を施行した。その結果、術後経過は良好で患者は10日目に独歩退院となった。
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