手術の工夫
肺動脈スリングを伴う単心室症に対する一期的気管形成・肺動脈形成・両方向性Glenn吻合
川人 智久
1
,
高野 信二
,
江川 善康
,
岩村 喜信
,
中原 康雄
,
新居 章
,
大西 達也
,
宮城 雄一
,
寺田 一也
,
太田 明
1国立療養所香川小児病院
キーワード:
心エコー図
,
X線CT
,
肺動脈
,
三次元イメージング
,
気管気管支形成術
,
Glenn手術
,
単心室
,
肺動脈気管迂回症
Keyword:
Echocardiography
,
Pulmonary Artery
,
Tomography, X-Ray Computed
,
Imaging, Three-Dimensional
pp.545-550
発行日 2013年7月1日
Published Date 2013/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2013316877
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日齢0の男児。出生後よりチアノーゼが認められたため、新生児集中治療室に搬送入院となった。MRIおよび造影CTにて精査を行なったところ、、心内構造は二心室で修復は困難と考えられたが、心房間交通は十分な大きさと判断された。また、冠静脈洞に還流する左上大静脈遺残が認められ、大動脈左前方より起始した主肺動脈は気管の右側で左右の肺動脈に分岐し、気管と食道の間を通る左肺動脈により肺動脈スリング(PA sling)の状態になっていた。一方、大動脈弓は右側で、左鎖骨下動脈(LSCA)が下行大動脈より起始して気管・食道の後方を走行し、このLSCAから動脈管が起始して主肺動脈に接続し、血管輪が形成されていた。以後、生後6ヵ月時の再心臓カテーテル検査でPA indexと肺動脈の発達良好を確認し、7ヵ月時に手術が行われた。手術は全身麻酔下に胸骨正中切開し、全身heparin化の後、心房脱血、上行大動脈送血で閉鎖回路による体外循環を確立して動脈管を切離し、左右肺動脈や気管の剥離後、小児外科チームに交替した。次いで狭窄部の中央で気管を切断して口側前面と尾側背面に割を入れ、結節・連続縫合併用で気管吻合し、気管支鏡を用いて気管内チューブを尾側吻合線の手前まで挿入、内ステントとした。そして、心臓外科チームに交替し、左上大静脈に脱血管を挿入した上で、左側両方向性Glenn吻合、右側は単純遮断で両方向Glenn吻合を行った。その結果、術後1ヵ月の気管支とCTによる評価では腔内は十分で、Glenn吻合に関しても右上大静脈狭窄以外の問題は認めず、血管輪も解除されていた。尚、目下は経口哺乳が可能である。
©Nankodo Co., Ltd., 2013