発行日 2011年2月1日
Published Date 2011/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2011106151
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76歳女。胸部異常陰影を主訴とした。入院時には腫大した甲状腺を触知し、血液検査所見に異常はなかったが、胸部X線で左上縦隔の腫瘤陰影と気管の右方偏位を認めた。また、胸部CTにて甲状腺両葉は著明に腫大しており、左葉から連続して縦隔に伸展し、左主気管支直上に達する腫瘤陰影を認めたほか、胸部MRIにて気管や大血管の圧排像も確認されたため、縦隔内甲状腺腫と診断して摘出術を行った。襟状切開アプローチで開始したが、縦隔内に腫瘍が深く下垂して頸部での反回神経の同定が困難であったため、胸骨縦切開を加えて腫瘍を摘出した。病理組織学的所見から腺腫様甲状腺腫と診断され、術後は良好に経過して気管の偏位も改善した。本例は胸骨下甲状腺腫に分類され、縦隔への伸展形式は、胸腔内の陰圧と重力及び下方の抵抗性の低さによるものと考えられた。
©Nankodo Co., Ltd., 2011