発行日 2008年1月1日
Published Date 2008/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2008133515
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45歳女。患者は労作時呼吸困難が出現し、徐々にこれが増悪、経皮的酸素飽和度80%台と呼吸不全を呈して搬送された。所見では著明なBNP上昇が認められたが、腫瘍マーカーの有意な上昇は認めなかった。胸部CTでは肺動脈主幹部から末梢に至るまで、管腔内をほぼ占拠する広範囲に腫瘍陰影がみられた。また、肺血流シンチグラムでは右肺前域ならびに左肺下葉に顕著な血流の低下を認めた。以上、これらの所見より、本症例は肺動脈悪性腫瘍を強く疑い、準緊急的に手術を施行したところ、肺動脈を切開すると粘液性で充実性の柔らかい腫瘍が充満しており、これを末梢まで除去した。術後は低酸素血症、循環不全とも著明に改善し、造影CTでは肺動脈内腫瘍は著明に減少していたが、一部には残存も認められた。一方、右肺中下葉の血流が著明な改善、左肺尖部、舌区の血流改善は確認されたが、左肺底部の血流には改善はみられなかった。全身状態は良好であったが、術後3ヵ月目のCT検査において腫瘍の再発・増大を認め、化学療法および放射線療法が行われたが、患者は術後16ヵ月で最終的に死亡となった。尚、病理組織学的所見ではintimal sarcomaと診断された。
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