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外傷性頸部気管完全断裂の2例と外傷性縦隔気管完全断裂・広範囲膜様部損傷の1例を経験した。症例1は30歳代の男性で、ハンドル外傷で受傷し近医に搬送され、意識障害、頸部挫創、口腔内出血、換気不全を認め、経口気管内挿管を行い陽圧換気を開始した。胸部CTで両側は肺挫創及び血気胸を認め、両側胸腔ドレーンを留置したが縦隔気腫が増大し、気管の断裂を認め、緊急搬送された。全身麻酔下に頸部襟状切開を施行した。気管断裂部の炎症は軽度で、Polydioxanone Sutureにて膜様部は連続縫合、気管軟骨部は結節縫合で気管形成を行った。術後4日で気管内チューブを抜管した。声帯麻痺を認めたが、気動閉塞は認めなかった。術後経過は良好で術後21日で転院した。症例2は、40歳代の男性で板で胸部を圧迫されて呼吸困難を生じ、搬送された。意識障害、頸部挫創及び皮下気腫を認め、顔面は全体に赤く腫脹し、経鼻挿管にて陽圧換気を開始したが、換気不良のため当院に救急搬送された。触診で頸部気管の非連続性を認め、胸部単純X線像で縦隔気腫及び気管内チューブの変位を認めた。頸部気管完全断裂と診断し、気管支鏡下に末梢気管まで気管内チューブ先端を誘導し、両側気胸を認め、両側胸腔ドレナージ後に緊急手術を行った。症例3は20歳代の男性で、仕事中に紙のロールではさまれて受傷し、近医に搬送時には意識障害はなく歩行可能であったが、徐々に血痰と頸部皮下気腫が出現し、CT撮影後に意識消失し、経口挿管し陽圧換気を開始した。胸部CTにて気管断裂と縦隔気腫を認め、CTでは縦隔気腫の増加、両肺挫創の悪化、気動の著明な狭搾を認めた。血中酸素飽和度の低下と徐脈を呈し、胸骨正中切開による緊急手術を行った。気管断裂部は逆テレスコープ吻合とし、術後翌日に抜管し、吻合部から末梢側の気管軟骨骨折による気管狭搾のためのステント留置を行い、呼吸管理及びリハビリテーション後の術後60日で退院した。
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