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1990~2005年に経験した外傷性気管・気管支損傷6例(全男、19~60歳、平均34歳)を対象とし、背景、受傷原因、診断、損傷部位と程度、付随する他臓器損傷、治療に関して検討した。受傷原因は交通外傷3例、転落事故2例、落下物による圧迫損傷1例であり、全例が鈍的胸部外傷であった。交通外傷は全例がオートバイ走行中の事故であり、その他は全例が労作時の事故であった。損傷部位は、主気管支損傷2例、頸部気管及び右主気管支損傷1例、気管・気管支損傷2例、頸部気管損傷1例であった。診断については、全例にCTが実施され、気管支鏡は4例に受傷時に施行され、損傷部位及び程度が把握されたが、その他の2例では受傷時には施行されていなかった。損傷程度については、気管支鏡検査が受傷時になされた4例では気管支や気管に大きな裂傷が認められ、1例は気管が全周性に離断した状態であった。付随損傷としては、血気胸、肋骨及び上下肢の骨折が多く、臓器損傷は軽度の肺挫傷が3例に認められた。治療については、頸部気管損傷及び気管・気管支損傷の3例は受傷日に緊急手術を施行した。2例は直接結節縫合を行い、1例は縦隔胸膜と食道、1例は肋間筋を用いて縫合部を被覆した。頸部気管損傷は端々吻合を行った。その他の3例は保存的治療を行ったが、最終的には手術が必要となった。この3例について概要を述べると、症例1は19歳の男性で、右気胸に対する胸腔ドレナージを施行され、気漏が止まらず受傷後27日に手術を行ってはじめて気管支損傷が判明し気管支縫合が行われたが術後気管支狭搾により当院に転院して右主気管支管状切除・再建を施行し、症例2は22歳の男性で、胸腔ドレナージで保存的治療を施行されている経過中に右無気肺を起こし、気管支鏡にて肉芽による狭搾が確認されバルーン拡張術の効果がないために当院にて右主気管支管状切除・再建を施行した。症例3は、26歳の男性で受傷から数日後に無気肺が出現し気管支鏡にて肉芽による狭搾が認められ、当院にて左気管支切除・再建術を施行した。術後経過については、2例は順調であったが、1例は術後再膨張性肺水腫により人工呼吸器管理を9日間要した。その他の症例でも術後の人工呼吸器管理が難しく、1例は反回神経麻痺のために気管切開が必要になったが、最終的には全例が治癒退院した。
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